あおぞら




第一話 『遅刻する理由…』



 五十嵐達二(いがらしたつじ)。
 この作品の主人公である何の取り柄も無い彼はいつも通り登校していた。

達二 「悪かったな…何も取り柄無くて……それにしても、これ…小説の典型的なパターンの始まり方だな…。ちょっとは違う方向から始めれば…?」

 いつも通り登校していた。

達二 「あっそう…」

 達二は教室に入ると自分の席に着いた。

達二 「早ッ!!つーか、学校に着いた事すら描写されてないっ!!」

 いちいちツッコム彼だが、彼の将来は別にお笑い芸人でもなんでもない。

達二 「悪かったな…いちいちツッコんで…」
啓介 「おい、何独り言言ってんだ?」

 達二が“独り言”を言っていると、達二の友人である宮崎啓介(みやざきけいすけ)が達二に声を掛けた。

達二 「(…こいつ、強調しやがった…)…ん?別に何も言ってないけど…啓介おはよう」
啓介 「あれ?…言ってたような気がしたんだが…、まぁ…兎に角おはような。それにしても、今日は早いんだな…」

 達二のいつもの学校到着時刻8:28…。
 遅刻時刻8:30…。

達二 「…そうかぁ?(ウザいなこの作者…)」
啓介 「うん、まぁでも早いに越したことはないけどな」
達二 「まぁな」
啓介 「そう言えば、まだ皐月の奴来てないな。昨日借りたゲーム返そうと思ったんだが…」
達二 「いつも通り遅刻ギリギリだろ?」
啓介 「そっかそっか、達二が来てるもんだから皐月も来てると勘違いしてたぜ…」

 達二のいつもの学校到着時刻8:28…。
 遅刻時刻8:30…。

達二 「……………」
啓介 「あ、い、いやその…別にそういうつもりで言ったんじゃあ………いや、ほ、ほら、お前ら双子だし…?」

 そういうつもりで言いましたが何か…?

達二 「(あー…この作者殺してー…マジ殺してー…)」

■五十嵐皐月■

 キーンコーンカーンコ――

 ガラガラッ!!!

皐月 「ま、間に合った…!!」
先生 「いや、間に合ってないぞ……(ニコニコ)」
皐月 「……………」

達二 「お前また遅刻だな……内申ヤバイぞ…?」
皐月 「いや〜…頑張って走ったんだけどね………」
啓介 「いや…お前。お前の家から学校まで歩いて二十分も掛からないだろ…?!」
皐月 「そだよ」
啓介 「じゃあ、何でお前ら家近いのにいっつもそんな来るの遅刻ギリギリなんだよ?!!」
達二 「ん?…まぁ、色々とな…」
皐月 「色々とね…」
啓介 「何だよ…色々って?教えろよ!」
達二 「判った判った、判ったから体を揺する止めろ」

―――達二の場合―――

 AM5:00

 ジリリリリ――

達二 「うーん……(目覚まし時計を止める)」

 リン………。

達二 「もう朝かぁ…ふぁあ………」

■リビング■

 AM5:40

達二 「朝食出来たと…。服着替えた後、父さんと皐月起こさないとな」

■父自室■

達二 「父さん起きて。飯出来たから…」
父親 「おお…、おはよう」

■皐月自室■

達二 「皐月起きろ〜………」
皐月 「う〜ん…もう少し…」
達二 「馬鹿言ってんじゃねー!早く起きろって!」
皐月 「…眠いぃ…」
達二 「知らねーよ。どうせまた、夜中中ゲームしてたんだろ?自業自得だ!さっさと起きろッ!!」
皐月 「う〜ん(布団の中に深く潜る)」
達二 「……毎度毎度…遅刻しても知らねーからなッ!!」

■リビング■

父親 「皐月はどうした?」
達二 「寝てる――」
父親 「またか……全く、達二お前とは偉い違いだな…はぁ…双子なのにどうしてこうも違うんだ…?」

 AM6:40

皐月 「…ふぁあ…おはよう」
父親 「皐月、起きるのが遅いぞ!少しは達二を見習って早起きして朝食でも作ったらどうなんだ?女なんだから。今のままじゃあ、良い嫁さんになれ―――」
達二 「父さん!今日は会議なんだろ?さっさと行かないと遅刻するよッ!」
父親 「そうだったッ!!」
達二 「はい。これ弁当」
父親 「すまんな…それじゃあ、行ってくる」
達二 「行ってらっしゃい」
皐月 「行ってら―――(手をフリフリ)」

 AM6:50

皐月 「ごちそうさん」
達二 「お前食うの早いなぁ…」
皐月 「いえいえ、それ程でも…」
達二 「別に褒めてない……まぁ、とにかく…早く服着替えて来い。後、歯磨きもしろよ?」
皐月 「へいへい」

 AM7:20

達二 「ふぅ……洗い物も終了と…んー…後は軽く掃除でもしとくか…まだまだ時間あるし…今日は晴れるって言ってたし…洗濯物も干さないとな…」

 AM8:14

達二 「ふぅ…一通り終わったかな…?時間は………げげ!!?やばッ!!また遅刻だぁーッ!!皐月ぃ―――ッ!!遅刻するぞぉ―――ッ!!」
皐月 「(ドタドタッ!!)」

―――――――

達二 「って感じかなぁ…」
啓介 「…………」
皐月 「どしたの?」
啓介 「達二……お前って…今流行りの主夫なんだな…(苦笑)」
達二 「違―――うッ!!!」

啓介 「なぁ…達二が掃除とかしてる間、皐月は何してんの?特に何もしてないように思うんだが……寝てるのか?」
達二 「あーあ、こいつか…こいつは」
皐月 「…私が説明するからいいよ。私は―――」

―――皐月の場合―――

 AM7:00

皐月 「着替え完了〜。んー…8:00まで余裕綽々だ…。んー…ここは時間を有効活用しないとお天道様に叱られるぜ。よし、昨日…いや、今日の続きでもするかな…ポチッとな」

 ゲーム起動…。

 AM8:14

達二 「皐月ぃ―――ッ!!遅刻するぞぉ―――ッ!!」
皐月 「ッ!!?」

―――――――

皐月 「っと言うわけだよ…」
啓介 「皐月………お前はゲームしてただけかいッ!!」
皐月 「ま…、そうなりますな…(えっへん)」
達二 「威張ってんじゃねーよッ!!!」
啓介 「…………」


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